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氏名:金井淑子(かない よしこ)

出身大学院等:
 東京教育大学文学部哲学科倫理学専攻
 東京教育大学大学院文学研究科倫理学専攻 文学修士

専攻分野
倫理学とフェミニズム・ジェンダー研究の両領域への関心から、近年は、「フェミニンの哲学」「フェミニズム臨床哲学」を自らの研究上のポジッショナリティとして自認してます。およそ人間にかかわる事象のすべてについて、問題の現場に立ち、私自身をも思索の臨床対象の例外とせず、哲学することの意味を考えたいとの思いからです。

キーワード
ヴァルネラビリティ、生き難さ、不安、トラウマ、自尊感情、ナラティブ、「女(わたし)」という謎

ライフワーク
固有の生きがたさの感情に駆動されて10代にはキリスト教に接近するも結局その門をくぐれず、大学はフォイエルバッハの宗教批判への関心をもって哲学科に進学。学部・大学院では、ドイツ観念論の系譜を初期マルクスから初期ヘーゲルの思想を辿ることとなりました。その後ドイツ現代哲学のA.ゲーレンの提唱する「哲学的人間学」に触発され、「人間学の唯物論的基礎付け」のテーマを自分の博論課題として立て、当時の人文・社会・自然諸科学の先端的知見を渉猟していた時期もあります。しかし関心軸は次第にドイツを離れ「1968年」のスチューデント・パワーの政治の季節を通ったフランスの知的状況に移り、フランスの「ポストモダン」思想や差異派フェミニズムに傾倒。40歳直前に『転機に立つフェミニズム』(毎日新聞社)を刊行したのを機に、思想的主戦場はもっぱらフェミニズム・女性学・ジェンダー研究の場面に。その後哲学とフェミニズム両領域を架橋する問題意識からの発言をすることを経て、現在は、「フェミニンの哲学」「フェミニズム臨床哲学」を自称するに至ってます。「〈女(わたし)〉という謎」に向けた自分探しの長い旅をしてきたのかも知れません。

自己紹介
戦後史とちょうど折り重なる私の個人史は貧しさを身体に記憶している世代、その10代は、映画『Always 三町目の夕日』の世界がまさに原風景として重なっています。基地の町横須賀で生まれ育ち現在も横浜在住の私の生活圏のほとんどは首都圏でしたが、じつは私にはもう一つとても深くかかわりをした旧「新潟三区」・長岡があります。大学院在籍時は学園紛争で大学が混乱の極みにあった時期、大学は封鎖され腰を据えて研究に打ち込める雰囲気にはなく、研究者としての先行きにもまったく展望を見いだせない。そんな中で声がかかった就職先が長岡市に新設された短期大学だったというのが機縁でした。この大学には学期中週一度往復する「変則的単身赴任」の生活をずいぶん長い年月続けました。その後、地元の横浜国立大学に移籍してからは、学部の教育人間科学部では「ジェンダーと社会」「多元社会論」「差別の構造」などの主題別科目を、また大学院の環境情報学府研究院では倫理学とジェンダー研究に関わるテーマで「倫理・科学・ジェンダー」を担当してきました。立正大学哲学科ではこれまでの私の「雑食系哲学」を資源として、あえてノイズを持ち込む気持ちで教育研究に携わる所存です。

哲学を志す人へ ─自己へのケア、傷を愛せるわたしに
すでに2000年以上も昔のギリシャ哲学の賢学は、哲学とは「愛知」「自己を知ること」「魂への気遣いの学」であると定義したのですが、私は、それを「自己へのケア」「自己の傷を愛すること」と置き換えて、現代において哲学することの意味をとらえ返したいと考えています。人間存在のヴァルネラビリティに向き合うこと、自分の中の生き難さにセンシティブであること、抽象化された人間一般ではなく、生身の性をもつ存在としての、他ならぬこの「女(わたし)」(もちろんこの「男(わたし)」も)が、この世界を生きてきたことですでに深く「被傷している」ことに気づくこと、と言い換えてもよいでしょう。それを不問視すれば、この世界は、ルサンチマンや甘え、自傷行為や他者攻撃、虐待、学校や企業でのいじめに見られる陰湿な暴力の蔓延を許してしまうことになりかねません。「傷ついた自分と向き合う力を育む」、「わたしの生き難さ」から世界を見るまなざしを鍛える。哲学・人文知の意味は、「わたし」を消してしまうグローバル化する世界の暴力に抗して「わたし」がそこからからすり抜ける知恵を編み出すことにあると見るべきでしょう。

担当科目
学修の基礎I・II、基礎演習 3C・4C、哲学演習3、哲学演習4、上級演習15・16、 卒業論文
〈大学院〉 哲学特殊講義(8)、哲学特殊研究(5)、 研究指導(5)

著書・論文
『依存と自立の倫理  女/母(わたし)の身体性から』ナカニシヤ出版、2011
『異なっていられる社会を  女性学/ジェンダー研究の視座』明石書店2008
『身体とアイデンティティ・トラブル  ジェンダー/セックスの二元論を超えて』編著、明石書店2008
『岩波応用倫理学講義5性/愛』編著、岩波書店2004
『ポストモダン・フェミニズム  差異と女性』勁草書房1989