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■専攻分野 古代ギリシャ哲学、特にプラトンの知識論 ■キーワード 知識、思いなし、真と偽、相対主義、記憶、対象認知、学習 ■ライフワーク 今まで、私のライフワークといえるものがあるとすれば、それは「知識とは何か」を探求する『テアイテトス』というプラトンの著作の研究です。これは、学部の卒業論文のテーマに選んだ本です。最初は難しくて何とか理解しようと思ってはじめたのですが、次第にプラトンの精緻なテキストに引き込まれていきました。子育てや親の介護も経験して、学部から数えて25年後に博士論文を書きました。これからもずっと、古代ギリシャのテキストを読み続けていきたいと思います。 それからもう一つ。私は10年工学部にいたので、工学部の学生さんと先生方と、重いハンディキャップがあり、体を自由に動かすこともできずに話すこともできない方々の生活現場から「福祉ものづくり」を立ち上げました。そこで私は、生老病死を支える技術やケアのあり方を考え、市民性の育成を目指す「サービスラーニング」という教育方法を実践しました。その時、このような取り組みを哲学的にきちんと考察する必要を強く感じました。今後は、この研究も続けていきたいと思います。 ■自己紹介 高校生の時デカルトの『省察』を読んで哲学に憧れ、大学で哲学の勉強がしたくなりました。大学に入って、哲学科の先生方が全員男性だということに驚きました。考えてみれば、歴代の哲学者も殆どが男性です。学生も殆どが男性でしたから、女子学生の友達ができないので、モダンダンスのサークルに入りました。学部の演習で出会ったプラトンのテキストに魅了されて大学院への進学を志した時、哲学を研究しているというだけで縁遠くなるのでは、と父が非常に心配したのを覚えています。その後ごくごく普通に結婚して、今は子供も3人いますし、親の介護も経験しました。女性の哲学研究者はまだまだ日本では少ないのは、出産・育児・看護・介護が女性の仕事という文化的土壌が根強いのがその一因だと思います。しかしこのような生老病死の中に、人間の生の根本を支える貴重な事実が存在していると思っていますし、それに触れながら研究を続けていけることが、私の強みだとも思っています。趣味はピアノとオルガンを弾くことです。 ■哲学を志す人へ 私は男の子を3人産みました。「人間が人間を生む」「人間は社会的動物」というアリストテレスのことばをこの身で味わう、『驚き(タウマゼイン)』に満ちた体験でした。そして下の二人は難しいお産で、母子ともに命の貴重さを日々実感しました。さらに、癌の母を看取る経験も通して、命をいとおしく思い、ともに生きることが、ひとに力を与えることを知りました。これは女性だから、ということではなく、人は誰でもさまざまな形で体験することだと思います。なぜなら、どんな人でも、人から生まれ、年をとり、病を身に負い死を避けられないのですから。哲学者の「ことば」ひとつひとつは、人間の生全体に裏打ちされています。 哲学を志した皆さんも、自分自身や周りの人を見つめなおすと、哲学者のことばを思い起こすような体験があると思います。そのことに敏感でいてほしいし、それをあなた自身の「ことば」にしてほしいと思います。 それにはまず、人類の歴史の中で積み重ねられた哲学の「語り方」を知らなければなりません。それを学ぶ場の一つが大学だと思います。私にとっては、プラトンやアリストテレスの書物を読むことや、現代の生命倫理やケア理論の本を読むことは大きな助けになりました。皆さんも、興味のある本をたくさん読んでください。手当たり次第です。そして、生きているあなた自身と向き合ってください。 私は大学生の時、先生から「テキストを読むことは自分自身を知ることだ」と言われたことがあります。その時はわからなかったのですが、今は少しわかるような気がします。 ■担当科目 倫理学とは何か、倫理学の基本諸問題、基礎演習 1B・2B、哲学演習 15・16、上級演習 3・4、卒業論文 〈大学院〉 哲学特殊講義(7)、哲学演習(2)、哲学特殊研究(8) ■著書・論文 『テアイテトス』研究―対象認知における「ことば」と「思いなし」の構造― 知泉書館(2007年7月) プロタゴラスの相対主義と自己反駁−『テアイテトス』169d3-171d8の一解釈ー 日本倫理学会『倫理学年報』第52号 pp.3−17(2003年3月) 『テアイテトス』151d7-153a4の構造―「なにものもそれ自体一であることはない(hen auto kath’ hauto ouden estin,152d2-3)」をめぐる考察― 日本哲学会『哲学』第53号pp.167−176(2002年4月) |